絡繰技師と六匹の猫 -三の星-


絡繰猫が、生魚の夢を見るだろうか。答えは「見ない」。見るのはご主人様の夢。
ご主人様は巷で傀儡師なんて呼ばれてて、オレたち絡繰密偵七星猫のリーダーでもある。
表向きでは「ニ邦絡繰専門店」を営む絡繰技師の顔をしてるけど、実際には政府の秘密警察から依頼を受けて、オレたちみたいな生きてる絡繰を派遣する仕事をしてる。
オレは七星の三號、人型になってターゲットを油断させて、それで情報抜き取るのが主な仕事だ。外装が人間のオンナに似てるらしくて、よく女装する。
女装した時はご主人様が喜ぶけど、帰ってきた時はちょっと不機嫌。全身くまなく消毒されて、オイルを塗られんの。オレは、それがちょっと面倒。でもいろんなオトコに触られるから、その都度消毒しなくちゃなんだってさ。
他のオトコがよくオレのこと欲しがるから、ご主人様も欲しいもん? って聞いたら怒られた。他のメンバーの教育に悪いから、そんなこと聞くなって。他のオトコに触られるなら、オレはご主人様に触られたいけど、ご主人様は違うのかな?
だから、オレは生魚の夢なんて見なくて、ご主人様にいっぱい触られる夢を見るんだ。いっぱいいっぱい可愛がって欲しいじゃん?
「大和さん!」
付け毛を外して、首のホックを外した。中から胸の詰め物を抜いて、それから、中華服のスリットから下着の紐を解く。ずるって落ちた下着の布を下ろして、作業台に座ってるご主人様の膝に跨った。
「うっわ!」
「ただいま!」
脱いだ下着を掴んだままご主人様に抱き付いたら、ご主人様がずり落ちた色眼鏡を上げて、オレを見る。
オレは、服の前側ぺらーんて持ち上げて耳のアンテナを寝かせておねだりした。
「早くメンテナンスしてよ。ターゲット、なんかヤだった。触り方が最悪」
そう言えば、ご主人様はクロスを出して、アルコールに浸す。オレの太ももにそれを当てて……うひゃ、ひんやりする!
「ひゃあ」
「ミツ、変な声出さないの」
「だって冷てぇんだもん! ん、にゃっ」
ふはって笑っちゃう。ご主人様が、クロスを掴んで尻の間を拭うから、オレはふるりと体を捩った。
「くすぐったい!」
我慢できなくて、捲り上げてた服から手を離す。ご主人様の首に抱き付いて、やめてやめてって腰を揺すった。股の間になんか当たってる。
「大和さん、なんか当たる」
「気にすんな……」
「えー、気になるんだけど!」
ぐにぐにって股で擦ってみた。あ、もっと硬くなった!
「んー?」
そうやってる内に、ご主人様がオレのホックを更に外して、胸にブラックライトを当ててた。触られてると、それで指紋がわかるらしいぜ?
「よくもまぁ、ベタベタと……」
そのまま、クロスで胸を拭かれる。胸の飾りをくにくにされて、オレはまたくすぐったいからひゃははって笑った。
「大和さんくすぐったい!」
「我慢。俺も我慢してんだから」
ぷっくり張った胸を、大和さんの手が撫でる。機械いじりする手だから、指の皮が厚くてちょっとざらってするの。オレは大和さんの手で触られるの好き。大事にされてる感じするじゃん?
「あの旦那にさぁ、すげー揉まれた。大和さんも揉んで」
「嫌だよ、なんでだよ……」
「メモリに残るの嫌なんだもん! 大和さんの手が良いから、上書きしてよ!」
 んって胸突き出したら、ご主人様は渋々、両方の手で両方の胸触ってくれた。控えめに力入れて、むにって。もっと強くてもいいのに。大和さんの手に胸押し付けて、体全体を揺らす。股の間に当たってるのがもっとおっきくなった。オレは、それをこすこす尻に当てる。
人工皮膚は柔らかくて、今じゃあほとんど人間の人肌と同じなんだって。熱くて硬くなってるものを挟んで前後に動く。ご主人様の手に胸も当たってきもちいい。いっぱい触られててうれしい。
「んっ、んっ、大和さん、もっと」
 ご主人様の指の間に、胸の飾りの突起挟んで、もっと摘んで欲しくて上から握った。
「足りないよ……」
 股からオイルが漏れてるかも。なんかぬるぬるしてきた。
 オレは、残ってるホック外して、肩まで中華服を下ろす。ご主人様の手が、それを見かねて、オレの腰を抱いて止めさせた。
「ミツ、駄目、これ以上……お前さん、セクサロイドじゃないんだから……」
 似たようなもんだろ。
少なくとも、人間の思いのままに動いて、言うことを聞いて、絡繰ってのはそういう「物」だ。そこに役目や用途の割振りなんて本当は殆ど意味を成さない。
傀儡師の「ご主人様」に、それがわからないわけがないんだ。
 
「ヨウシュン、こちらへおいで」
「はあい、旦那様」
 ——なーにが旦那様だ。オレのご主人様は一人だけだっつーの。
 そんな不満を飲み込んで、にっこりきゅるっと笑って「旦那様」に寄り掛かる。
「ヨウシュン、こちらは、盡が国よりお越し頂いたカンイーチ殿だよ。ご挨拶をなさい」
「閣下、お初にお目に掛かります。旦那様に可愛がって頂いてるヨウシュンと申します」
 「旦那様」の目の前に座る男は、値踏みするように頭のてっぺんからつま先までオレの姿をジロジロと見て、それから、中華服のスリットの隙間で視線を止めた。
「これはこれは、可愛らしい猫猫ではありませんか。大変によくできた絡繰だ」
「ははあ、閣下もおわかりになりますか。これが、ニ邦の新作でね」
「旦那様」に太ももを撫でられて、オレはちっと舌を打ちそうになる。我慢する。何故ならオレはお仕事中だからだ。そう、例え、胸のホックを外して「ほうら精巧でしょう」と胸をはだけさせられてもだ。
「肌理も細かく、手触りも殆ど本物の娘ですよ。人工皮膚というのも捨てたものではありませんな」
 ジジイの手に下乳揉まれて、流石に頭の後ろがビリビリする。ジジイの後ろ頭蹴り上げて、早く帰りたい。今すぐ帰りたい。
「確かによくできているようですが、娘というより、ふふ……少年ではありませんか。貴方には少年趣味がおありか」
「何、ニ邦には話のわかる技師がおりましてね」
 いやらしい笑みを浮かべて商談をする。そんな旦那の膝に座らされて、オレはメインカメラで机の上を眺めた。既に中身は、家にいる六號・ナギのところに転送されてる。ナギは解析専用機だから、この暗号の示すところを既に解析し始めてるところだろう。
 この旦那と盡が国とは、非合法な貿易の噂がある。政府の秘密警察はどうやら、その真実が知りたいらしい。それで、オレのご主人様のところに依頼が来たわけだ。
 不本意だけど、このすけべな旦那のところに派遣されたのがオレ、三號ってわけ。オンナの体に偽装することもあるけど、この旦那は「女装男子」が好みらしい。だから、換装も偽装も必要ない。オレはただオンナ物の中華服を着てるだけ。
 不幸中の幸いだけど、すけべなだけで不能らしいこの旦那には、体撫で回されるだけで済んでいる。
(気色悪いのに変わりはねぇけど……)
 数週間張り込んで、ようやく今日、貿易の相談の部屋に呼ばれた。オレはうんと愛らしく振る舞わなきゃならない。なーんにも知らないお人形さんみたいに。
「閣下は何の御用でいらしたのですか?」
 そう聞けば、盡が国の役人は、これまたすけべな笑みを浮かべて「何、君の旦那様とは旧い友人でね」と言った。
嘘つけ。これはどう見たって薬草のリストだ。商売に来たんだろう。
「旦那様、こんなに素敵なご友人がいらっしゃるなんて聞いてないわ!」
「ヨウシュンに目移りされたら敵わんからねぇ。何分、彼は気品もある。そしてハンサムだろう?」
男の機能を失った私とは大違いだ、と尻を揉まれる。ここに出刃包丁があったら切り刻んでるところだ。
「あんっ……」
だけど、オレはお仕事中なので、べらぼうに可愛く鳴いてやった。癪だけどよ。
「これこれ、目に毒です。勘弁してやってくださいな」
軽蔑の滲んだ目で、けれど曖昧に笑って旦那を見る盡が国の役人に、オレは顔を覆って恥ずかしがる……ふりをする。
「ああ、これは失敬」
 顔を覆ったまま、ナギの解析完了「パーフェクトですよ、ミツーキ!」という暗号通信を聞き届けた。
 あーあもう、最悪!
「旦那様、ヨウシュン、もう外して良いでしょうか……」
 耳元で、「回路が火照ります……」と囁く。両の太ももを少し擦り合わせて、体を捩るみたいに見せた。
火照るわけねぇだろ、クソジジイ。
 けれど、そんなオレの嘘を信じたクソジジイは、盡が国の役人の目の前からオレを外させる。
「寝室で待っていなさい」って言われたけど、オレは使用人に「回路のメンテナンスをして参ります」と断って、屋敷を出た。
 こんなことを、数件抱えている。
  
「ヨウシュンやるの、もう嫌だ……あの爺さん、好き勝手触りやがって」
「今回の商談で一段落だろ。暫くはお役御免じゃないか?」
 ご主人様は、オレの胸から視線を逸らして色眼鏡を上げた。
「……お前さん、俺にもおっさんって言うじゃん。俺は触ってもいいのかよ」
「今更何言ってんだよ。大和さんはオレのご主人様じゃん」
「気持ち悪いとか、ないわけ」
 あるわけないじゃん、そんなこと。
 大体、だから帰ってきてすぐこうしてんだよ、バァカ!
「大和さんに触られるの、気持ちいいよ……?」
 ぷっくり持ち上がった胸の飾りをご主人様の目の前に突き出す。
「ったく……」
 ご主人様は、仕方なさそうにオレの飾りに顔を近づけた。前髪を耳に挟んで、熱い舌先でオレの胸をちょんってつつく。オレは気持ちよくって、ぴくんて体を縮こまらせる。
 ご主人様は、今度はオレの胸にちゅうって吸い付いて、溢れそうな粘液を吸い上げてくれた。潤滑油の代わりに、人工皮膚の下は人工の粘液が浸されてるんだって。それが、薄い部分から滲んで出ちゃう。じゅっじゅって余分な粘液を吸い上げてもらって、オレの胸の飾りはぴくぴく震えてる。胸の皮膚は少し薄く作ってあって、ご主人様はそれを吸いながらむにって押し潰してくれる。
「んあっあん」
 余分な粘液がご主人様の口の中に吸い上げられて、汚れてる飾りをぺろぺろって舐めて綺麗にしてくれた。もう片方もおんなじように、ゆっくり吸って、揉んでくれる。
「きもちい……、やまとさん、きれいになった……?」
 そう言えば、ご主人様は粘液をクロスに吐き出して、ため息混じりに笑った。
 余分な粘液入ってると胸苦しいからさ。オレは、お礼にご主人様の、おっきくなってるおちんちんを自分の尻の隙間に押し付ける。
 こっちも粘液垂れちまいそう。でもこっちは粘液出た方が都合がいい。ご主人様のおちんちん挟みやすいから。
 服の下で苦しそうなご主人様のものを、腰紐を解いて引っ張り出して、それから尻の隙間に改めて挟み込む。粘液出て濡れたところに挿れて、あとは、出したり入れたり繰り返すだけ。
「んっんっん、あっ、やまとさん、やまとさんの、いつもよりおっき……!」
「ミツが我儘言うからだろ……我慢できなくなっちゃった……」
 ご主人様のおちんちんが、オレの尻の中で膨らんで、内臓の基盤をぐりぐりする。内臓基盤は濡れても問題ないけど、触られるとビクビクってしちゃう。脳の回路がふらふらする。
「ああっ、びりびり、って……やっ」
 オレはそのびりびりが気持ちよくて、基盤のいいところにご主人様のおちんちんが当たるように腰を回した。ぐりぐりしてると、ご主人様がオレの擬似おちんちんを指で弾く。
「ひゃあっ」
「ミーツ、あんまり刺激すると漏電するだろ……」
「だって、大和さんのおちんちん、気持ちい……っ、あっ」
 オレの中に、ご主人様の精液が染み込んでくる。後で掻き出さないと、それでも漏電しちゃうんだってさ。でもオレ、ご主人様の精液いっぱい出されるの好き。
 オレはゆすゆす腰を振りながら、尻の隙間を開いたり閉じたりする。ご主人様が「んっ、んっ」って短く声上げてる。眉がその度にぴくって上がって、気持ちいいんだ? オレも気持ちいいよ〜
「やまとさん、やまとさん、もっと奥がいいっ」
 俺は脚を上げて、もっと深い尻の奥にご主人様のおちんちんを咥え込む。ぎゅうって締めて、腰を回した。
本当は物を入れちゃいけない所にご主人様のが届いて、オレの視界にばちばちってプラズマが散る。
「あうっ……やば……っ!」
 エラーが発生して、視界が赤い。いろんな所からぐちゃぐちゃに粘液が溢れて、警告を鳴らしてる。
「あっ、ばか……!」
ご主人様が、オレの中からおちんちんを引き抜こうとして、内側がぐちゃって擦れた。つま先がびくびくっとする。あ、きもちいって思ったら、多分ご主人様のおちんちんに微電流が流れちゃったのかも……おちんちんから精液がびゅくびゅくって飛んだ。オレの中の粘液と混ざって、ぐちゃぐちゃの音が響く。腹が重たい。
オレはご主人様の熱々の精液を腹いっぱいに感じて、一生懸命尻の隙間を締めた。溢れちゃったら服と床汚しちゃうから、溢さないように。
「み、ミツ、ちょ、やめ……っ」
なのに、ご主人様のはそれでまた硬くなっちまったみたい。オレはデスクの上に寝かされて、そのまま、なりふり構わずおちんちん押し付けられた。角度が変わって、別の装置に先端が触れる。
「ひあっ」
 我慢できなくなったみたいなご主人様がオレのナカにいっぱいいっぱいぶつけてきて、その度にオレの基盤がびくびくって反応する。
「やっ、やっあっ、きもちい、びりびり……、やらぁ、やまとさぁん……っ」
「ミツ……くっ、も……で、出そう……っうっ……」
 ご主人様のおちんちんが、オレのナカでびたびた暴れて、そのまま、またいっぱい精液出してくれた。
くちゃくちゃになったオレの中から、ご主人様の精液が溢れる。あーあ、デスク汚しちゃったから、後で掃除しなきゃ……
 ずっぷり入ってたオレのナカから、ご主人様のおちんちんが引き抜かれる。
オレの人工皮膚のこの隙間は、ご主人様の形を記憶してるから、抜かれた後は暫くその形になっちゃう。
尻の隙間から、ご主人様の精液がいっぱい溢れた。
「あ、う……出ちゃう……」
 どろどろって溢れた精液を雑巾で拭って、ご主人様が色眼鏡を上げた。
「お前さんの役職変えないと、俺の方がどうにかなりそう……」
「ええ……? どういうこと……? オレ、クビになっちゃうの?」
 ご主人様の精液が染みてきて、それのことしか考えられなくなる。腰がびくんて跳ねた。
 メインカメラがぎゅうって狭まって、多分維持ポンプの形になってるかも。人間で言う心臓? カメラが赤くて、ご主人様のことちょっと見えにくい。
「違う違う。他の男に触らせるの本気で嫌になってきた……武闘派回路に差し替えるかって話」
「外見の換装しないなら良いよ」
「なんだよ、意外と気に入ってんの? 最初嫌だ嫌だって言ってたじゃん……」
「だって、この姿、大和さんが可愛がってくれるから」
悪くないかもって思ってさ。アンテナの耳をぴこぴこ動かしたら、ご主人様が服のホックを一個一個止めてくれた。
「……用途以外の事、させたくないんだけどな……」
「大和さんのセクサロイドならなってもいいぜ!」
「そういうこと言わないで」
 ちぇってむくれてみると、ご主人様が尖った唇にちゅってキスしてくれた。
「俺が我慢出来なくて、ミツ壊しちまいそう」
 壊したくない……って、股の間をバカ丁寧に消毒された。尻の間にプラグ入れられて、そのままご主人様の精液吸引される。プラグと尻の間から、くぷくぷって音がした。変なの、これは全然気持ちいくねぇの。
「大和さんなら壊してもいいのに。どうせ自分で直せんだろ」
「だから、そういうこと言わないのー……」
 引き抜かれたプラグを、またアルコールで消毒して、ご主人様は難しい顔してる。オレは、消毒終わった腹を撫でて下着を穿いた。紐を結んでオッケー。
「部屋に戻って服着替えて」
「はぁい」
 裾のひらひらした中華服、これ選んだのだってご主人様なのになぁ。ひらっひらってしてると、尻側ぺちんて叩かれる。
「こら、あんまり人にケツ見せない」
「はぁーい」
 ご主人様だけ特別なんだよっ!
 たしたし走りながら、消毒されたばかりの尻を押さえた。
 今日も、絡繰猫のオレはご主人様の夢を見たい。